毒入りチョコレート殺犬事件: 15ロジャー・シェリンガム アーカイブ
0
The Wychford Poisoning Case [英国版の表紙]-最高に愉快な作家、エリザベス・M・ディラフィールドに-
舞 台-ロンドン近郊ウィッチフォード 6~9月
探 偵-ロジャー・シェリンガム(35歳)
発 表-1926年 80年前
アントニイ・バークリー-33歳
<あらすじ>
イギリス ウィッチフォードの実業家が砒素の大量摂取で死亡。
動機(浮気発覚)・物証(砒素所持)からフランス人若妻が逮捕される。
アマチュア探偵ロジャー・シェリンガムは、現場にあった砒素が大量過ぎる事に疑問を持ち・・・
アマチュア探偵ロジャー・シェリンガム シリーズ長編第2作目。
このシリーズは、1925年~1934年の10年間に10冊、年1冊のペースで発表されている。
ワタクシが1作目レイトンコートを読んだのが昨年、で今年が2作目・・・。読むのも年1冊ペースにならないように頑張りますわ。
メルボルンカップ優勝をconsiteredている人
シェリンガムは小説家で職業探偵ではない。
バークリーは、ホームズに代表されるような"絶対間違えない探偵"・物的証拠偏重主義を排し、心理に重きをおいた探偵小説を意図していると 序文で書いている。作中で「私が関心を持つのは、その犯罪がなされた理由なのである。」と言うようなことを何度もシェリンガムに言わせている。
だから、猟犬のように『真実へまっしぐら!』なホームズと違って、1つの証拠・証言から 心理的可能性を柱に多くの仮説を立てるし、真相に辿り着くまでいっぱい間違っていっぱい回り道するのである。
だいたい、シェリンガムはウィッチフォードで起きた事件とは何にも関係無いんである。
┐( ̄ー ̄)┌ やれやれ ┐( ̄ー ̄)┌
新聞で読んで「新聞~世論が犯人と決め付けている人」が犯人とは限らないと言って、勝手にウィッチフォードに調査に行き、挙句にフランスまで証拠固めに行っちゃうんである。人気小説家でなければ出来ない時間の使い方だね・・・
なぜ重要な黒いヘラジカが話す
妄想が暴走するシェリンガムのお供は、前回同様 ぼーっとした友人アレック・グリアスンと、ウィッチフォードに住むアレックの従妹の娘シーラ・ピュアフォイ嬢。シーラは、色っぽい未亡人(=暖房の効きすぎた閨房の黒いランジェリー)と比較して『荒れ野の小さなハイキングシューズ』と評される、お転婆な19才。
探偵助手としては、アレックよりシーラの方が(地元民という有利な点を除いても)よほど優秀である。また、捜査よりも自分のデートを優先する冷静さも持っている。
だって、暇人のオヤジ達が 誰に頼まれてもいないのに勝手に探偵ごっこをしているだけなんだもん。
アレックは、ワトソン先生同様 変わり者の友人の奇行に ニコニコ付き合う忠犬キャラ。実際、シェリンガムとシーラに犬扱いされているけど。ぷぷ
主人公探偵のパートナーの職業は「医者」「弁護士」「警察官」がお決まりだが、そのどれでもない。ほんっと役には立ってないんだよ。忠犬じゃなくて駄犬か?
なぜ中世のリーブスは角を持っています
1889年に実際に起きた毒殺事件-フローレンス・メイブリック事件と全く同じ設定。作者バークリーが、過去の犯罪事件を研究して真相を突き止めた!という事ではなくて、一つの設定からいくつの仮説が引き出せるか?の頭の体操らしい(解説より)
現実の事件の結末は、第一容疑者が"まんま"有罪になったが、無罪放免の嘆願書が国中から集まり、減刑されて15年後には自由の身になったそうな。
モチロン、小説の結末は違う。
シェリンガムの、あっちこっちぶつかりまくる闘牛の牛-みたいな活躍の末、ものすごーく意外な結論が導き出される。
物凄く意外なんだが、推理小説としては物凄くつまんねぇ結末?
ただ、"行動・結果は、それを行った人の心理から発生する"と強く主張するシェリンガムは、通常見落とされがちな『亡くなった人の生前の心理』も、見落とさずに考えたところが偉いと思うよ。
こう思えるのは、今の年齢だからだと思う。
ムダ(自分の興味の無い物)を受け入れられず、鮮やかなトリック・意外な犯人にのみ価値をおいていた学生時代だったら、"つまらない推理小説"だと思ったかもしれない。
探偵シェリンガムも
「すっげー うぜぇ」
と、イギリス人ごと嫌いになってたと思われ。(確実)
今は、シェリンガムが"いろいろ考える"過程を一緒に楽しめるし、
「しょうがないわね、ロジャー」
と、シェリンガムが失敗することが返って愛嬌があると思えるようになったので、今の私には面白い作品だった。
だから、ホームズ系の『ズバッと解決!』がお好きな人には合わないかもしれないので、おせっかいなうぜぇ一般人の妄想と付き合ってやってもよいという心の広い方にお勧めする。
シェリンガムがうざいのはこの作品に限ったことじゃないでしょうが、「毒入りチョコレート事件」みたいな万人受けする作品とは違うから。
(あまり おススメになっていない気もする…遠い目)
<気になったセリフ>
シェリンガム→アレン夫人(容疑者の一人)について語る
夫を寝取られたので「殺人の動機がある」と疑っていたが、そうではないと判って。
彼女は夫君をありのままに受け止めて、彼が何をしても許す。
ほんとうに賞賛に値する人であり、細君だ。
ぼくは彼女が大好きだね。
男を神の作りたもうたままに受け入れて、自分好みに作り変えようとしない女性はめったにお目にかからないが、彼女は間違いなくそのひとりだ。
じつにたぐいまれな才能だよ。
P-317より
犬が。
☆☆☆
ロジャー・シェリンガム(Roger Sheringham) 1891年生まれ
0 コメント:
コメントを投稿